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クロエマーシーバッグ編集

「花村くんだわ。ねえ、知ってる? 花村くん、最近、サッカー王子って呼ばれているのよ」 「ふうん、そうなんだ」  勇作は、サッカー部に入ったものの、派手なパフォーマンスはいっさいしなかった。  一年に混じって基礎《きそ》体力作りと雑用にあけくれている。小柄《こがら》な一年の中で頭ひとつ大きい勇作はとても目立つ。  イタリア王子という愛称《あいしょう》は、いつの間にかサッカー王子に替わってしまった。  試合に出て華々《はなばな》しい活躍《かつやく》をしているわけでもないのに、サッカー王子の愛称がついたのは、二年の彼が一年にまざって、真摯《しんし》に練習を重ねている様子が、女の子たちのハートをわしづかみしたらしい。  見《み》え隠《かく》れしていたすさんだところが消えたのも、少女たちの人気を高くしているようだ。  女の子たちはバカではない。顔がいいだけのちゃらけた男の子を、王子様とまつりあげたりしない。  勇作は、地味な努力ができる少年だったからこそ、少女たちの王子様たりえたのである。  勇作が、女の子に愛想を振《ふ》りまくのはあいかわらずだが、粉を掛けることはなくなった。  ゆり絵に対するアプローチも影《かげ》をひそめた。  僚とゆり絵が仲良くしていることも、勇作をあきらめさせる原因になったようだ。  プレイボーイだと思っていたのに、以外にも勇作は、先生ひとすじでいるらしい。  デビルベアのホレ薬は、気まぐれをおこさせる程度の効果しかない。だが、ふたりは今もつきあっている。  もちろんふたりは、交際していることを、学校ではみごとに隠しているのだが、事情を知っている僚は、ふたりの間に流れる親しげな空気ではっきりわかる。  ふたりはお似合いだったのだ。  僚は、勇作の邪魔《じゃま》をしないようそうっとその場を離《はな》れた。  昔の友達が、イキイキしている様子を見るのはうれしい。
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